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2000/3/17                   27号


喜怒哀楽

ただいまのテーマ

スウェーデンの家族

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グラン通り四番地に住んでいるヨーナスは、35歳。妻のエレンは年上の37歳。17歳と5歳の子供がいる。でも、この子達は、エレンの連れ子で、ヨーナスの子ではない。
 同じアパートのハッサンはリンダと同棲中。結婚はしていない。リンダは妊娠中である。
 やはり、同じアパートのブッセは48歳。離婚して一人暮らし。ときどき、成人した子供が遊びに来る。
 そしてリーサ。年齢不肖だが、もう若くはない。女優という仕事のせいか、とうとう独身でいままで来てしまった。今も、一人暮しである。

 え、何の話かって?実はこれ、初級のスウェーデン語の教科書の登場人物なのだ。日本人の常識からみると、教科書の登場人物としては、かなり不自然な印象を受ける。

 だって、日本の教科書だったら、サラリーマンのお父さん、少し年下の専業主婦のお母さん。そして、できのいい男の子と女の子。たまには、物分りの言いおじいちゃんとおばあちゃんが登場。一戸建てに住んで、もしかしたら犬なんかを飼っている。なんていう家庭が登場しそうではないか。

 ま、そんなおとぎ話のような家庭はともかくとしても、冒頭の人間関係が、初級の教科書にのるのもむりはないスウェーデンの現状がある。

 結婚と恋愛をテーマにした時にも書いたが、サンボと呼ばれる同棲関係は非常に多いし、例え結婚したとしても、離婚率も高い。子供が生まれたから入籍しようなどという考えも日本ほど一般的ではない。二度三度の再婚だって、珍しい事ではない。
 わたしだって、そうした状況は理解できた。しかし、わたしが理解に苦しんでとまどったのは、離婚した二人が、その後も顔を合わせることだ。良い友達になったりしているのも珍しくない。

 スウェーデンに来たばかりの頃、J一家のミッドサマー(夏至祭)のパーティに呼ばれた。それ以前に、別の場所でJのお母さんに紹介されていた。とすれば、そのお母さんと結婚している人は、Jのお父さんだと思うでしょ。ところが、パーティの席には、他に、Jのお父さんと呼ばれる人がいたのだ。そして、その人も奥さん連れ。
 芯まで日本人のわたしは、「あ、そうか。わたしのヒアリングが悪かったんだ。Jの両親はこっちの二人ね。むこうのカップルは親戚かなんかだったんだ」と自らを納得させた。
 だって、たかだか20人ぐらいしか集まっていないパーティに、すでに再婚している父親と母親のそれぞれのカップルを同席させるなんて、想像できないじゃないか。
 ところが、事実はそれだったのですね。我が家以外の出席者はその事情を知っていて、全く平気に振舞っている。
 日本人のわたしは、お父さんの方とばかり話していると、お母さんが気を悪くしないかとか、座席が隣になったらまずいだろうなとか、いらぬ気を使ってしまう。それに、その話題にだけは、触れてはいけないだろうと思って、会話もぎこちなくなる。
 ほとほと、疲れてしまった。

 後で事情を聞くと、Jが成人したころふたりは離婚したのだそうだ。その後、ふたりとも次の伴侶をそれぞれ見つけて、それぞれが幸せに暮らしている。両親が離婚したとはいえ、子供にとっては、父親は父親、母親は母親である。どちらに邪魔される事なく会う権利がある。パーティを自宅で開くのに、どちらかだけを呼ぶなんてそんな不公平なことはできないのだ。

 このあたりのことについて、スウェーデン在住のちずこさんのホームページで面白い記述を見つけたので引用したい。今回、わたしがこのテーマを予告した後で、ちずこさんも偶然同じテーマで今週のトピックスを書いていたのだ。
 記事は、sesamの2000年第一号「典型的スウェーデン」のシリーズから、ANDERS SANDBERGさんの書いたものだ。訳はちずこさん。
「そして、ひとつの新しい単語が生まれた…プラスチックパパだ。…子供達は、どこか別のところに暮らしている本当のパパと、一緒に暮らしているママの新しい男性…プラスチックパパを持つ事になる。…(取材した16歳のクラスの)複数が、彼らの本当の兄弟ではないほかの子供達と住んでいた。ほとんどが、本当のパパ、あるいはママと毎週会っていた。」さらにプラスチックパパの多くは、いわゆる継子によけい気を使うため、継子いじめどころか、かわいがりすぎてしまう事もあるようだ。プラスチックの子供を持ったために、自分の子供をより良く理解できるようになったという記述もある。

 娘の誕生会を開いた時、友達の一人は、その週末は、本当のパパと会う週だったので、送り迎えには、本当のパパが来た。プラスチックパパを良く知っているわたしは、ちょっとどぎまぎしてしまった。もっとも、ちずこさんの説明によると就職活動の時などに、この大家族のコネクションを総動員するので、複雑な人間関係も捨てたものではないらしい。

 その人間関係に勝手に疲れたわたしは、まだまだスウェーデン式考え方になりきれていなかったのである。実際、多くの別れた夫婦が良い友達になっている。
 友達と思えば、腹の立たないことも多いから、わたしも一回、離婚してみようかな。でも、新しい夫の連れ子を自分の子供と同じように愛せる自信がないので、再婚はしない方がよさそうだ。
 だって、カッコイイスウェーデン人男性の子供だったら、そっちばかりかわいがってしまいそうじゃない。



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