| オペアという仕事 |
無料のSFI(移民のためのスウェーデン語教室)に通う前、有料の語学スクールでスウェーデン語を勉強していた。 約10名ほどのクラスメートの中で、3人がオペアだった。 オペアというのは、日本人にはあまりなじみのない名前だろう。住み込みの子守りである。保育園などの公的な施設とは別に、私的な子守りは大きく分けて4種類ある。 まず、日本でも良く知られているベビーシッター。時間給で依頼者の家に来て、子守りをしてくれる。日本だと贅沢なシステムで、一時間2000円程とかなり高い。日本の場合、主婦の副業というケースが多いようだ。 ヨーロッパでは、国によって年齢制限が異なる(スウェーデンの場合12歳以下)が、こどもを大人なしで家に置いていくのは、違法である。そこで、ベビーシッターの登場となる。多くの場合、高校生などのバイトで、時給も安い。イギリスでは、10年前、田舎で時給一ポンド(当時で200円ぐらい)、ロンドンで三ポンドだった。今は、いくらぐらいなのだろう。 夜のベビーシッターなど子供はすでに寝かしつけられていたりするので、コーヒーを飲みながらテレビを見ていられる。結構、楽。もっとも、子供によるが…。 次が、チャイルドマインダー。これは、民間の託児所。自分の家に、一定以上の保育スペースがあれば、トレーニングを受けて、チャイルドマインダーとして登録する事ができる。保育スペースと大人の数で、引き受けられる子供の人数もかわる。 この場合、依頼者はチャイルドマインダーの家まで、こどもを連れて行くのが普通である。ただし、親が共稼ぎの場合など、学校のお迎えから引き受けてくれることもある。イギリスではチャイルドマインダー協会が充実していて、近所に数軒のチャイルドマインダーが簡単に見つかったが、保育園の発達しているスウェーデンでは存在していないかもしれない。しばらく前に、日本でも発足したという新聞記事を読んだ。 そして、ナニー。ナニーは、住み込みで保育をしてくれる。ナニーとしての専門の教育を受けているので、乳幼児から預けられる。しつけまで仕事のうちである。そのため高い。医者の知人が、「ナニーを雇うとわたしの給料の3分の2はナニー代になってしまう」と言っていた。イギリスでは、ナニーは立派な職業である。そして、上流社会では、ナニーを雇って、ナニーに子供の教育を任せる事も多い。イギリスのナニーは質が高いので、世界中で需要があるようだ。 最後が、本日のテーマ「オペア」。ナニーと同じように住み込みの子守りであるが、仕事というよりバイトといったほうがいいだろう。多くの場合、オペアは外国人である。というのも、外国で、その国の言葉を勉強したり、生活体験をしたりしたい人が応募してくる仕事だからである。 例えば、スウェーデン人のAさんが、だれかに子供の面倒をみてほしいとする。ハンガリー人のBさんは、スウェーデン語を現地で勉強したいと思っている。そこで、BさんはAさんの家に住みこんで、子供の面倒をみる代わりに、宿泊費や食費はタダにしてもらう。 いったん社会に出てからもう一度、大学に入りなおしたりすることが一般的なヨーロッパでは、このシステムかなり人気がある。20歳前後の若い女性が、安く海外体験ができるからである。最近ではオペアの男の子もいるようだ。 知人の紹介などで、みつける事が多いのだが、最近では、インターネットを通じて求人し合うようである。 契約は、個人契約なので、それぞれの家庭によって条件が異なるが、一般的なものは、次のとおりである。 雇う家庭は、個室を用意しなければならない。 一週間の労働時間は20〜25時間。週休は二日。それ以上になる場合は、残業手当を払う。 食費は無料。ただし、私用電話代などは払う。 自国からの交通費は、半額、もしくは全額を雇う側が払う。 語学学校の授業料は、雇う側が払う。ただし、期限付きの場合もある。 原則として子供の世話(と飼い犬の世話)のみが仕事である。 保育の資格がないので乳幼児は預かれない。 月額三万円程度のお小遣いが貰える。 たいていの場合、契約は一年のようだ。 スウェーデン語のクラスメートは、ドイツ、リトアニア、エストニアから来ていた。朝、学校に送り出すまでと、午後、下校時刻から夕方までが仕事時間である。そのため、日中は、語学クラスに通ったりと自由にすごせる。 なにしろ日本ではオペアというシステムがないので、興味津々。いろいろ聞いてみた。やはり、家庭によって条件はさまざまで、原則として、子供の世話が仕事なのに、掃除、洗濯、食事のしたくまでさせて女中扱いの家もある。 ご主人の気にいる美人のオペアは、奥さんから嫌われたりと人選も難しそう。 必ずしも、金持ちの家ばかりではないので、個室とは言っても、かなり条件の悪い部屋ということもある。 時には、おおきな勘違いしているご主人に、危険な目に合う(もしくは、合いそうになる)こともある。 子供の世話ではなく、5頭の犬の世話が仕事という人もいた。でも、語学の勉強にきている人には、話し相手が犬だけというのは、ちょっとかわいそう。 先日、数日泊まらせてもらったイギリス人の知人の家には、26歳のハンガリー人のオペアが居た。どちらかというと、人使いの荒い部類に入る、わたしの知人。 額の上の埃を見て「ちゃんと掃除するように言っておかなきゃ」。 そして、オペア慣れした(つまり、遠慮がない)二人の子供とまだしつけ前の子犬の世話。どう見ても、大変そう。 ボーイフレンドと遠くはなれているので、朝は、郵便配達の人を耳をすませて待っている。それでも「週給がハンガリーの月収にあたるし、英語をマスターすると、ハンガリーで、良い仕事につけるから」と、前向きである。 日本で共稼ぎをしていたとき、あまり片付かない家の掃除を誰かに頼みたくなったけれど、「こんなに汚くては、はずかしいから、頼む前に掃除をしておかなきゃ」などと考えてしまう私には、とても、同居なんて無理。気疲れしてしまいそう。 件のイギリス人に 「他人がいると、夫婦で思いっきり怒鳴り合いもできないじゃない」というと 「だから、いいんじゃない」と言われた。 なるほど……。 |
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