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2000/8/20                  43号


喜怒哀楽

ただいまのテーマ

養子縁組

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スウェーデン人に子供を紹介されて、戸惑う事がある。両親とも、金髪碧眼のどうみても、スウェーデン人なのに、紹介された子供が、アジア系の顔つきだったり、アフリカ系の皮膚の色だったりする時だ。

 当惑が顔にでるのだろう。それとも、そういう状況に慣れているのだろう。多くの場合、すぐに説明してくれる。
「インドから養子にもらってきたんだ」
「ベトナムから養子にしたんだ」などなど。
 
 それも、その本人の目の前で。

 日本人的考えと日本人的生活から抜け出せないわたしの頭の中は、たくさんの???でうまる。
 だって、そうでしょう。日本だったら、
1. 養子である事は極力かくす。
2. みかけで、明らかに養子とわかる子供を貰わない。
3. 親戚などから養子にする事が多い。
4. 本人の前では、その手の話題はさける。

 だから、受験の為に住民票を取りにいって初めて気がついた…などという…悲劇?がおこったりする。それによって、ぐれちゃった…なんていうのは、漫画の読み過ぎか…?失礼…。

 さて、スウェーデン人が養子を貰う理由は、一つといっていい。自分の子供が持てないから。
 スウェーデン人が、明らかに外国人とわかる子供を養子にするのはなぜか。その理由も一つ。スウェーデン人の子供を養子にする可能性はほどんど皆無だから。

 まずは、そのあたりから。
 スウェーデン人のカップルで、子供が欲しいのに持てない場合、養子をさがしてくれる機関に登録する。聞いたところによると最低、3つは大きな機関があるようだ。そのうちの二つは、公営もしくは、公営に準ずる。
 その機関では、両親を審査して、親にしてもよいという判断をすると、養子を斡旋してくれる。この審査は、かなり厳しく、子供にとって、適切ではないと判断されると、養子を貰う事ができない。
 たとえ、適格と判断されても、多くの場合、長い時間待たされる。なぜか。列になってまっているからだ。
 
 しかも、養子を貰うのは、ただではない。60000クローナ程度、払わなければならない。今のレートで、75万円ぐらいだろうか。そのお金は、機関の運営や、そのほか子供を斡旋するのにかかる費用となる。もちろんすべての親が即金で払えるわけではないので、ローンも認められている。
 そして、その多くの子供は、アジアの難民である。今は、コソボの子供も多い。

 一昔前は、スウェーデン人も、養子を貰うならスウェーデン人の子供と考えていたのだそうだ。ところが、福祉が充実するにしたがって、子育てのできないケースが減ってきた。児童手当や育児手当が支給されるので、経済的理由で育てられないということがないからである。
 今では、養子対象になるスウェーデン人の子供は年間1人とか2人とかいう数なのだそうだ。
 とはいっても、中には親として適格ではない人がいる。例えば、アル中とか、薬物中毒とか…。そうした親の子供は、養子には出されない。里子にだされるのだ。里親は、実の親が、立ち直って、子供を返して欲しいといえば、返さないわけにはいかない。
 親の権利が法律で守られている。しかし、このケース、子供の立場から考えるとちょっと判断は複雑になるような気がする。

 さて、子供は欲しいが、スウェーデン人の子供をもらえる可能性が減った。ちょうどその頃、ベトナム戦争のために、戦争孤児が大量にうまれてしまった。それまでは、外国人の養子に抵抗があったスウェーデン人も、あまり多くの外国の子供がやってきたため、その状況に慣れた。

 そして、今では、養子と言うと、インドや韓国などアジアの国々から貰うのが一般的になった。

 ある知人は、四人目の子供をインドから貰ってきた。実の子供が三人すでにいるのだが、もう一人ぐらい育ててもいいなあと思ったのだそうだ。どうせ貰うなら、他の人が親になりたがらない子供を貰おうと考えた。そして、まだ、マザーテレサが生きていた頃、彼女を訪ねて行って、彼女の孤児院にいた子供の中から、片目の見えない女の子を貰ってきた。
 
 イギリスにいた時に、こういう話を聞いた事がある。子犬が欲しい時、とくに血統にこだわらないのなら、日本の保健所のようなところで犬を貰う事ができる。日本なら、かわいい犬、気立てのよさそうな犬から順番に貰われていく。ところが、イギリスでは、それと同時に、障害のある犬、かわいくない犬も早く貰われていく。
 かわいい犬は、いずれ誰かに、貰われるだろう。でも、この障害のある犬は、自分がもらわなければ、貰ってくれる人がいないに違いない…と考える人がたくさんいるのだそうだ。
 人間のこどもを子犬と一緒に扱って、もうしわけないけれど、一脈通じる話のような気がして、敢えて書かせてもらった。

 別の知人は、上の男の子を、斡旋機関を通して、インドから貰った。少年は三歳だった。そして、数年後、同じように、斡旋機関を通して、ネパールから少女を貰った。その時、引き取りにいくのに、少年を同行させようとしたら、泣いて頑固に抵抗したのだそうだ。いやな思い出しかないので、二度と行きたくないと言ったという。夫婦そろって、次の子供を引き取りにいかなくてはならないので、少年をひとり置いていくわけにもいかず、たいそう困ったと話してくれた。
 今、その少年は18歳。少女は16歳。どうみても親子に見えないスウェーデン人の親と幸せそうにくらしている。少年も少女もききわけのいい良い子供に育っている。両親も、めったに声を荒げて怒るような事をしない、落ちついて理想的な親である。
 でも、うがった見方だとは、思いながらも、わたしの目には、皆でがんばって、理想的な家族を演じているように見えてしまう。その年頃なら、反抗もするでしょう。感情的に怒ったりもするでしょう。そうはいっても、有形無形の人種差別を感じる事も多いでしょう。ましてや、年頃になれば、いろいろ考える事もあるでしょう。

 そういう、たくさんの疑問を聞いてみたいのだが、わたしの日本人的感性が、それは、ぶしつけだよとささやくので、聞けない。
 でも、聞いたら思いのほかあっけらかんといろいろ答えてくれるような気もする。それほど、他国からの養子が定着しているのだ。

 さて、くだんの斡旋機関、親は子供を選べないのだそうである。斡旋された子供を黙って貰うしかない。ある知人は、貰った子供がふたりとも障害者だったのだそうだ。

 そこで、また、わたしの???が増える。
「貰った子供を気に入らなかったら、返せるの?子供を貰った後で、自分の子供が生まれてしまったら、返せるの?」
 スウェーデン人の友人には、わたしの質問の意味が、最初まったく理解できなかった。
そして、なんとか理解すると、却って不思議そうにわたしにこう尋ねたのだ。

「だって、貰った瞬間から、それは、自分の実の子供になるんだよ。実の子供をいらなくなったからって、捨てる親はいないでしょ」

 ああ、こう言う時、わたしは、こころから、スウェーデン人の懐の深さに畏れ入るのである。

 そうしたことを理解できない日本人から、外国からの養子を育てるのは、社会貢献だとか、お金持ちの道楽だといった意見を聞く事があるが、断言しておこう。
 それは、絶対違う。本当に、純粋に、子供がほしいのだ。

 でなければ、こんな報われない重労働、だれが、大金を払ってやりますか。
でしょ〜。




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