| ゴットランド島 |
スウェーデンの南東バルト海の中に二つの島がある。カルマルの近くだ。陸に近い方がエーランド島。ちょっと離れていて、大きい方が、ゴットランド島。 エーランド島は、橋でつながっている。が、ゴットランド島は、船か飛行機で行くしかない。ストックホルム近くのニネスハムン港(一日数便あり)か、カルマルの少し北のオスカルスハムン港(夏は一日ニ便。後は一便…ただし、夏は8月14日で終わっている)から、船が出ている。我が家の場合、後者を利用。 そして、その船のゴットランド島ヴィスビー到着は夜中の一時。 その時間におろされても…。と思ったら、6時までは船にいてもいいとのこと。 さて、スウェーデンの10月始めの6時に船から降ろされた。一日一便の船を迎える心がまえと言うものが感じられない港。つまり、街中まだ、しっかり寝ている。 仕方ないので、島内をドライブして夜明けを待つことになった。でも、歩いてきた人はどうするのだろう? 暗闇のなかにシルエットだけ見えるヴィスビーの町は、ため息が出るほど美しい。 子供達いわく、「アラビアンナイトの世界」。中世の建物と巨大な廃墟が混在している。 通り掛かりの人を捉まえて、ドライブするのにいい場所を聞く。旅の心得、現地の人から情報をとろう。どうやら、北半分の海岸線を回るのがよさそうだ。 大きな洞窟もあるという。おいしいレストランもあるらしい。自販機で地図も手に入れて、いざ、出発。 ところが、地図でかいてある方に進んでいるはずが、一方通行のサインにしたがっていると、また、同じ所に戻ってきてしまう。 実は、ヴィスビーは、城壁で囲まれた街で、市街地から出るためには、城門をくぐらないといけない。しかも、中世の町並みが残っている。つまり、道は狭く曲がりくねっていて、意思通りにはすすめない。 立体迷路の中をさまよったあげく、なんとか城外に出た。あとで、また、ここに帰って来なくては行けないというだけでも、気が重い。 もちろん運転手とナビゲータ(つまり夫とわたし)の関係も暗く重くなっている。賢い子供達は、さっさと後部座席で睡眠に入っている。 あとは、海岸線にそって北上すればいいはず。なのに、なんで、行き止まりになるの。 ゴットランド島は、夏のバカンスの場所。海岸は、車が通りぬけられないように、袋小路になっていたのだった。気まずく、幹線道路まで戻る。 そろそろ、街も起きただろう。どこかで朝食をとろう。こどもたちも起きて空腹を訴え始めた。良いといわれたレストランに行ってみる。暗い。掲示がある。「夜のみ営業」。 観光ポイントのレストランならやってるさ。海辺の町まで行ってみる。確かにレストランはいくつかあった。でも、全部、閉め切ったまま。 こうなったら、もうどこでもいい。味はとやかくいわない。困った時の地元の人。 「レストランねえ。もう、夏じゃないからねえ。開いてるとこあるかなあ。2つ隣の町まで行ってごらん」 行ってみた。さすが、地元の人、良く知っている。言っていた通り……開いているところはなかった。 スーパーでパンとハムと牛乳を買って、車の中で食べる。よかったじゃない、安上がりで。 そうはいっても、ミュージアムはやっているでしょう。バイキング村に行く。 駐車場に一台も車がない。いやな予感。入り口に掲示。「来年の夏まで開きません。学校の申し込みがあれば特別開きます。連絡先はこちら」 そうはいっても、動物園はやっているでしょう。ゴットランド動物園に行く。 入り口に掲示。「来年の夏まで開きません」。でも、動物はいるんでしょう。見せてよぉ。網越しに中を覗くが…、むなしい。 そうだ。大きな洞窟。最大の目玉の観光地。自然のものだし、それは見られるだろう。 駐車場には、数台の車。大丈夫そうだ。切符売り場に掲示。「シーズンは終わりました。15人以上の団体の事前予約があれば、開きます」洞窟の前には、人工の鉄の扉が作られていた。 他の数台の車も、観光客だが、足しても15人にならないし、事前予約じゃいずれにしても無理だ。せめてもの救いは、ここでは、同じ思いをした人が他にもいたこと…。何の助けにもならないが、気休めにはなる。 やっぱり、ゴットランドはヴィスビーしかない。ヴィスビーの町に戻る。再び城門探し。 ヴィスビーは、観光が主な収入源だけあって、さらに、ウリが町並みということもあって、シーズンと関係なくサービスが望める。ヴィスビーの中のレストランももちろん開いている。 ツーリストインフォメーションは無料のガイドツアーも主催している。 決められた時間に決められた場所に集まると、語学堪能なガイドが、街中を案内してくれる。多分ドイツ語もはなせるのだろうが、今回のメンバーは、スウェーデン語組と、英語組。 以下の説明は、そのツーリストインフォメーションのガイドさんの受け売りです。 ゴットランド島。面積は3140平方キロメートル。人口は約60000人。 そのうちの20000人がヴィスビーに住んでいる。 ヴィスビーが栄え始めたのは、バイキング時代。ロシア方面に進出したスウェーデンバイキングの最初の占領地と言っても良いかもしれない。 バイキングの交易の中心地として活躍した。というのも、島なので、船が寄港し易かったし、バルト海上にあるので、どこからのアクセスも便利だったのだ。 その後、ドイツ人が大量にやってくる。そして、ハンザ同盟の貿易港として、最大の繁栄を迎える。12世紀から15世紀のことである。 しかし、ハンザ同盟の衰退とともに、商業地としての活気は失われた。今では、スウェーデンの夏のリゾート地である。 なにしろ、そのハンザ時代の町並みがほとんどそっくり残っているのである。ヨーロッパでも有数の交易地だったころ、いろんな国の人が来て、教会を立てたために、ヴィスビーだけでも、16の教会があった。商人達の信仰心が、厚かったのでしょうね。どれも、すごく立派な教会。 ところが、その後、ドイツ人が大量にはいってきたり、デンマーク領になったりという歴史の変遷の中で、唯一ドイツ人の教会だったサンタ・マリア大聖堂以外は、すべて廃墟となってしまった。 その廃墟がまた、ヴィスビーの町に風情を加えている。 先ごろ、ヴィスビーで一番古い建物が売りに出されて、一億6000万円ぐらいで取引されたそうだ。日本人には、驚くほどの金額ではないが、スウェーデンのしかもこの小さな町では、みんなでびっくりしたらしい。 その古い建物も高層住宅である。そして、驚くべき事に、数百年前のその時代に、ダストシュートがもうけられていた。 ヴィスビーの目抜き通りにあたる海岸通は、その昔、まさに海岸線にあった。そして、そこが、商人達の一等地で、金持ちの家が軒を並べていた。それらの家は4階建て5階建てなのだが、地下室の下にもう一部屋作ってあって、それは、周囲の壁の隙間とつながっていた。住民は、その壁の隙間にゴミを落とすと、自動的に最地下のその部屋にたまるようになっている。 驚くのはそこから。その地下は、潮の充ち引きを利用して、中のゴミが自動的に、海に押し流されるようになっていたのだ。すごいでしょ。 そして、そのため、ヴィスビーの海岸線は、ゴミが蓄積されて行って2メートルも陸地があがったのだそうだ。つまり、現在の海岸線は、ゴミの上になりたっているわけね。 ヴィスビーで三番目に古い建物は、いまはレストランになっている。薄暗く中世の雰囲気があって、なかなかいい。ただし、席は長く相席で、しかも膝にかけるナプキンも長い一枚の布で、運悪く両脇に座った人は、片手でそれを引っ張りながら食事しなくてはいけない。 ヴィスビーの城壁には、観光ポイントとなっている見張り塔がある。入り口が地上から10メートルも上にあって、敵が容易に入りこめないようになっている。敵が入れない代わりに、味方も、交代がこないかぎり、出て行く事ができない。水は雨水を溜め、食料は魚の干物。トイレは、容器にためると、窓から海側に捨てていたのだそうだ。過酷な勤務だこと。 ヴィスビーの町は、観光で生活するようになってから、ある人の提案で(ごめん、記憶できなかった)家の前にバラを植えようということになった。それで、多くの家が、玄関脇にバラを植えている。別名「バラと廃墟の町」と呼ばれる由縁である。 多くの芸術家が、この島に住みたがる。 ヴィスビーの城壁内には、今や、スーパーは1軒しかない。なにしろ、道は狭いし、曲がりくねっているし、一方通行だし……というわけで、城壁外に大型スーパーがいくつもできたら、城壁内のお店は成り立ち行かなくなってしまったのだ。 その最後の1軒は、大広場の一角にある。「なぜ、この店だけ残ったのでしょう」というガイドの質問の答えは、「斜め前に酒屋があるからです」というものだった。 以前に書いたが、スウェーデンでは、酒屋は専売である。ヴィスビーの酒屋は、その大広場にある。すると、酒を買いにきた人がついでにつまみもということで、立ち寄るので、そのスーパーだけが生き残ったのだというのが、ガイドの説だった。なるほど。 約2時間の徒歩ツアー。最初にスウェーデン語で説明をして、次に英語で説明をしてくれた。ヒアリングの練習にスウェーデン語バージョンも一緒に聞いてみた。で、気がついたスウェーデン気質というのがある。 スウェーデン人は、笑わない。 同じ説明を、英語で繰り返すと、一同がどっと笑う場面がある。そういえば、さっき、スウェーデン語バージョンの時、5人ぐらいが、唇の端をゆがめたなあ……あれが、この部分だったんだ。 日本の武士とスウェーデン人は似ている……? さて、本日のご教訓。 スウェーデンの夏は、6月初めに始まり、8月半ばに終わる。施設を楽しみたい人は、その間に旅行を計画しよう。でも、それ以外の時に行くと、安上がりよ。 ところで、従業員達、あと10ヶ月はどこで働いているのだろう???
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