| スウェーデンの住宅事情 |
平均的スウェーデンの学生の月収は、返済不要の奨学金(約2000クローナ)と教育ローン(約5000クローナ)。そして、その約半額は、住居費である。 一人暮しの老人の月に受け取る年金もいろいろあわせて約7〜8000クローナ。そして、その約半額が住居費である。 スウェーデンでは、政策によって、住宅公団が大量に家を建てた。スウェーデンモデルと呼ばれる社会福祉の充実で、どこでもいいのなら、住むところがないということはない。 大学出たての若者でも持ち家を買う事ができる。日本円にして200万円ぐらいで、買える家もある。ルンドやマルモの中心地の一戸建てでも2000万円ぐらいの値段である。 平均年収が、300万円ぐらいでも、年収の5倍もだせば、十分な住居が手に入れられる。日本の感覚で言う土地100坪、建物30〜40坪ぐらいの住居である。 ところが、都市部にこだわると、恐ろしいほどの住宅難である。 例えば、ストックホルムの中心地にアパートを探したら、8年待ち10年待ちは、あたりまえだという。 ましてや、ただでさえ物件の少ない賃貸アパートなど、手に入れられたら奇跡である。 スコーネでいちばん人気があるのは、大学の町ルンドだろう。毎年新しい学生が入ってくる事もあり、卒業した学生が気に入って住みつづける事もあり、そもそも、町のサイズが小さいこともあり……と、絶望的な住宅難である。 そのため、お隣のスウェーデン第三の都市マルモより、物件が高めである。 大学寮も、限られた数しかないので、全員が入れるわけではない。となると、どうするか。友達の所を泊まり歩く生活になる。それでも、学生は寮があるだけまだチャンスがある。一般人でルンド市内しかも中心部に住もうと思ったら、努力と運にかけるしかない。 例えば、ルンド大に合格した学生は、まず学生寮を申し込む。そして、同時にルンドの住宅公団にアパートも申し込む。頭文字をとってLKFと呼ばれるこの公団(マルモならMKBね)。通常8年待ちと言われている。すると、大学生活を終えたあと、運がよければあまり待たないで、公団アパートに住めるかもしれないからだ。 卒業してから申し込んだのでは、手遅れなのだ。(こうしてルンドの学生達は、将来を見る目を養う) もちろん公団住宅は市場価格より安い。住む栄光を手に入れた人は、なかなかそれを手放そうとしない。例えば短期の海外出張、もしくは、転勤があったとしても、万一、帰ってくる時の為を考えて、その住居はキープしておきたいと思うのが人情だ。 その留守の間、別の人にまた貸しするのである。例え、たった3ヶ月でも、1ヶ月でも、家を探している人は山ほどいる。だから、欲張りな人は、賃料を倍にしてまた貸しすることもある。(こうしてルンドの学生達は、経済について強くなる) 家具はそっくりそのまま残していって、そこに別の人が住んでいるということも、少しも珍しくない。もちろん、一定期間以上長くまた貸しするのは違法なのだそうだ。それで、大家も、また貸しの契約を長期にしない。だって、希望者は、山ほどいるのだから。 このまた貸しは、スウェーデン語でアンドラハンドと呼ばれている。英語で言うとセコンドハンドということですね。 大学の学生寮でさえ、アンドラハンドが横行している。大学の寮は、大学生だけに開放されているので、本人が卒業と同時に権利は失う。もちろん、また貸しは禁止である。 しかし、例えば、短期で留学するとか、ガールフレンドと同居する事になったとか、留守になる時、権利を放棄してしまうと、戻るところがなくなってしまう可能性が高い。 アンドラハンドは、借り手と貸し手の両方の利害が一致しているので、止む事はない。 このガールフレンド(もしくはボーイフレンド)との同居。スウェーデンでは、日常茶飯事の出来事である。そして、破局も日常茶飯事の出来事である。そこで、賢明なるスウェーデン人は、同居生活破綻のことを同居し始める時から考えていて、自分の住処をそう簡単に手放したりしないのである。 賃貸アパートも探すのが過酷だが、売り物件も少ない。同様の理由で、権利だけは持っていてとりあえず貸しておこうと考える人が多いからだ。 で、ルンド中心部の売り物件(めったにでないが)の多くは、一人暮しの老人が死んでしまったために出まわるのである。なんでも、常時数千人のひとが、家を探していて、見つけられる人は1割以下なのだそうだ。 つまり、常時数千人の人が、老人の死ぬのを待っている……こわい。 こういう売り手市場のビジネスでは、当然、価格もぴたりとは、告示されない。例えば70万クローナ以上、などど、書かれる。後は、欲しい人の間で、せりが始まる。 70万で始まったものが、2割ぐらい上がるのは、あたり前のこと。 先日知人が、マルモで家を買った。やはり競りあがっていって、とうとう最後に負けた。 ところが、後日、不動産屋から電話。 「競り落とした人が、よく物件を見てみたら、改修個所が多すぎるというので、気が変わったのですが、いりませんか」 値段は、その人と知人の競り合いの出発点まで、下がっていた。 しかし、人が諦めたぐらい、破損のひどい家を買うかぁ。ところが、修理改築の好きな知人の彼は、わくわくしているのだそうだ。こういうのを運命の出会いと言うのだろう。 マルモでは、まだ物件が余っているので、こういう事も起こり得る。 しかし、ルンドではこうはいかない。 賃貸物件のあまりの少なさに絶望したルンドの知人は、購入作戦に切り替えた。たかをくくって参加したら、本気にならざるを得ない修羅場。なにしろ、情報を見て出かけた時には、既に売れている。予算の金額で物件を探すと、競りあがって、土俵にもあがれない。 さらに、アパートの場合、管理費がくせもの。この管理費の中には、共同の洗濯機などの施設。庭や敷地の掃除。ごみの処理。水道代。暖房費。などのほかに、メンテナンスの積み立て金がある。資金運用のきちんとしている会社だと、この積み立て金は少なくてすむ。しかし、経営状態の悪い会社などは、管理費が年々上がって行く事もありうる。 そのため、スウェーデンでアパートを買うとき、管理会社の経営状態というのは、要チェック項目。 その金額もばかにならない。通常賃貸で、2LDKクラスだと3〜5000クローナぐらいである。ところが、買ってしまった物件の管理費(共益費の意味合いの方が、強いかな)も、同じ位するのだ。 それを長い目で計算すると一戸建てのほうが、将来的には、安いかも。 さて、件のルンドの知人。朝、昼、晩のネットでの情報チェックはかかさず、新しい物件が出てくると、即、連絡。全力投球して、本命は逃したものの、第ニ本命をゲット。 闘い終えた彼女の感想 「ルンドで家を買うのは、ルンド在住以外の人では、絶対に無理。闘い中、何度泣いたことか…」 ハ〜イ、お疲れさんでしたぁ。 さて、前述した公団住宅にまつわるこんな話もある。 ストックホルムでは、公団住宅を入居者が買い取る事ができるようになった。しかし、公団アパートは概ね便利のよいところに建っているし市場価格より安いしということで、それの売買については、与党も議論を重ねていた。 にも関わらず与党の女性議員(しかも大臣)が、買ってしまった。その値段は220万クローナだったが、実は350万以上の値打ちがあるもの。ということで、大スキャンダルに。そして、とうとう大臣の椅子を降りる事になった。 その話をわたしに教えてくれたSさんのコメント 「もともとこの国は住居を購入したりしなくてもアパートが安く借りられるように、貧富の差による住居や地区の格差が生じないように、といろいろ対策を講じてきたけれど、今はそれが機能しなくなってしまったからこういう現象がおきるんでしょうね」 マルモでは、まだ、公団の売買は禁止されているが、ほぼ同一だった家賃は、市場価値に連動して、地域によって格差ができるようになるとか。 福祉の多くの面で、日本より先を行っているスウェーデンだけど、このあたり、日本の後を追っかけてきているみたい。 そのうちに、土地をころがしたバブリーな経済になったりするのだろうか。年収の5倍以内で家が買える時代を懐かしむようになったりするのだろうか。 夏以降、就職が決まってストックホルムに移り住んだ知人の彼は、当面、友達の間を転々と泊まり歩いたようだ。当然、同行できずに置いて行かれた知人も、長く待ったあげくに、アンドラハンドの短期の住居が見つかってストックホルムに旅立った。 でもね、日本のみなさん。スウェーデンで大変なのは、一部の都市だけです。 我が家のように、ちょっと田舎にこもれば、商店街がないので、余計なお買い物はしないし、空気はきれいだし、星はきれいだし、道路で鹿はみかけるし、ナメクジの生態には強くなるし、長靴が似合うようになるし……最高です。ハイ
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