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2001/1/28                  64号


喜怒哀楽

ただいまのテーマ

犯罪あれこれ

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  二十年以上前の資料によると、刑務所に服役する人口当たりの率は、10万人に対して43人で、日本とスウェーデンは全く同じだった。

 ところが、21歳以下の若者の服役率は、日本はスウェーデンの約10分の1。その理由のひとつは、日本の少年法だろう。しかし、スウェーデンの方が若者の犯罪が多いのも事実である。

 さらに興味深いのは、殺人件数の人口比では、スウェーデンの方が倍の殺人が起こっている。が、検挙率は九割を超える日本にくらべて、スウェーデンは5割強。日本の警察は優秀だ。人口当たりの警察官の数も日本の方が多い。

 ところが、性犯罪は、なんと日本の方が、4倍多い。
 薬物中毒は、スウェーデンが800倍も多い。

 資料が古すぎるので、数字は大きく変わっているだろうが、大雑把にまとめてみるとこんな感じである。

 先日、機会があって、スウェーデンの福祉事務所で相談員の話を聞くことができた。問題のある家庭が駆けこんで来るところだ。というわけで、犯罪がらみの相談も多い。
 もっとも多いのは、ドラッグと家庭内暴力だそうだ。

 スウェーデンでは、麻薬を常用していても、販売してなければ、軽い罰金刑のみ。しかも、デンマークとの橋もつながったし、今までよりいっそう簡単にヨーロッパ大陸から麻薬が密輸されるようになった。
 コペンハーゲンのクリスチャニアという地域は有名な無法地帯で、ヒッピーや芸術家など多彩な人々が住んでいる。そして、そこに行けば簡単に麻薬を手に入れることができる。
 橋の開通で、南スコーネの人達がいちばん心配したのも、ドラッグの流入である。

 家庭内暴力の訴えの主流は、移民家庭なのだそうだ。特にアラビア系の国々では、父権は、絶対である。ところが、スウェーデンに来て、言葉は不自由だし、仕事はないし、というわけで、一家の柱たるべき夫のアイデンティティが脅かされている。そうしたストレスが、さらに弱い立場の妻に向けられて、暴力と言う形で表現される。
 よれよれになった妻が、助けを求めて駆け込むと、福祉事務所では、用意してあるアパートに女性をかくまう。もちろん、居場所は、教えない。いわゆるシェルターですね。行政はこうした住所非公開のアパートの部屋をいくつか持っている。もちろん、直接の隣人には協力を得ているようだ。

 夫の暴力(たまには、妻の暴力ってのも、あるのかしら?いえ、我が家では、ありませんよ。きっぱり)から逃げた女性は、原則として本人が居たいだけ、そこで休息をとることができる。

 しかし、多くの場合、経済的不安、言葉の不自由、文化の違い、孤独…などから、また、元の夫のところへ戻って行く事が多いと言う。そして、同じ過程を繰り返す。
 というわけで、同じ女性が何度も往復するケースが珍しくないのだそうだ。

 さらに増えているのが、文化の違いによる子どもとの諍い。
 大人になってから移民してきた両親に比べて、小さいうちに来た、あるいはスウェーデンで生まれた子ども達は、先に言葉の壁をクリアしてしまう。
 ともすると、親のための通訳を子どもがするということにもなる。そうした経験をしていくと、絶対であったはずの父権がゆらぎ、立場の逆転が起こる。自国の文化の中では、絶対に逆らえないはずなのに、父親が子どもを押さえきれなくなる。
 それが、犯罪の原因となることも多い。

 先日、ある判決がでた。興味深かったので、紹介したい。

 イラクからの移民の一家が、夏休みにイラクに里帰りした時、父親の兄弟が長女を殺害した。その17歳の少女は、スウェーデンで育った。そして、スウェーデンの学校に行き、スウェーデンの文化を吸収した。
 彼女にとっては、ボーイフレンドと会うことも、友達とディスコに行くことも、普通の17歳の行動だった。
 ところが、イラクの文化では、結婚は親の決めた許婚と早ければ10代のうちにする。もちろん、許婚以外のボーイフレンドとつきあうなど、もってのほかである。
 父親は、再三、彼女に注意したが、説得力はなく、彼女の行動を変えることができなかった。

 そして、自分の兄弟と相談して、一時帰国の折にイラクで、娘を殺してしまうと言う計画を実行したのだった。実行犯は、兄弟である。
 当然、逮捕されてイラクで裁判になった。

 ところが、イラクでは、そうした家族のふしだら(あ、これも死語?)な行動を見過ごしている方が恥と言う文化である。一家の恥である娘を殺すのは、家名の名誉を守る為の「名誉殺人」。やむをえない行為として評価される。以前、浮気した妻を殺した事件もあったが、同様。殺さなければ、世間から、恥ずかしい一家と見られてしまうのだ。

 というわけで、ごく短い禁固刑で、すんでしまった。

 しかし、問題は、その家族の市民権が現在はスウェーデンにあることだ。姉を殺された妹が、スウェーデンに帰ってきて、司法に訴えでた。事件はそれで、発覚した。

 父親は、スウェーデンで殺人罪で、裁判にかけられる事になった。そして、それが、先日、結審した。判決は終身刑である。
 しかし、被告は、今だ、イラクから帰ってきていない。

 移民が犯罪の原因だという見方は、差別だと思うが、確かに、移民の率の高いところは、犯罪の率も高い。異文化に暮らすということは、たやすいことではない。


 スウェーデンの事件として、もっとも有名なのが「パルメ首相暗殺事件」である。

 1986年2月28日夜、時の首相オーロフ・パルメが、妻と一緒に映画に行った帰りに、ストックホルムの街中で射殺された。パルメ首相は、プライベートな時にはボディガードを極力断っていた。
 夜中の臨時ニュースで流れた時、多くのスウェーデン人は、最初、本気にしなかった。
「暗殺なんて、アメリカで起こっても、スウェーデンで起るはずがない」というのが、多くの認識だった。
 そして、それが、冗談でもウソでもないとわかると、国内は騒然となった。

 わたしの友達は、夜中にも関わらず、他の友達たちと電話を掛け合って、ショックを分かち合ったのだと話してくれた。そして、多くのスウェーデン人達が、その夜のことをいまだにはっきりと覚えていると話す。

 国際問題にも強い意見を発していたので、外国人に暗殺されたのだ。あれは、プロのしわざだ。ニュースはスウェーデン人より先にアメリカ人が知っていた。アメリカが一枚かんでいるに違いない。国内の反対派のしわざだ。若者の思いつきの犯行に違いない……。
 憶測は乱れ飛んだが、まだ人通りのある時間のストックホルム中心地での出来事にもかかわらず、結局、真犯人はつかまらないまま、事件は迷宮入りになった。(正確には、まだ、調査中とのことですが)

 スウェーデンは日本と同じく無許可の帯銃は禁止である。にもかかわらず、つい最近は、恐喝事件で未成年同士の銃を使った殺人が、世間を驚かせた。

 しかし、わたしの個人的な印象としては、スウェーデンの犯罪は、まだ、動機がわかりやすい。昨今、激増している動機のわかりにくい日本の犯罪や、動機はわかるが、共感しにくい大量殺人などと比べると、問題の根は、そんなに深くないような気がする。

 さて、テーマを最初に戻すが、親子の立場の逆転で、押さえきれなくなったアラビア系の子どもの犯罪……。別に異文化の中に暮らしていなくても、日本でも今では、日常的に立場の逆転が起こっている。封建的な社会が良いとは思わないけど、社会ルールを守る為には、なにかの力関係っていうのが、必要なのかなあ、などと、考えてしまったわたしなのでした。



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