2001/5/4                  72号


喜怒哀楽

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自転車事情

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 スウェーデンは、自転車利用者が多い。デンマークも多いので、スカンジナビアの傾向かもしれない。

 こちらの自転車生活で驚くのは主につぎの4点。

1. 自転車につけるリアカーなど部品の充実。

 子どもを荷台に座らせるパターンとリアカーに乗せて引っ張るパターンと二つある。小さな子どもだと、荷台に子供用の椅子をつけていても、寝たりすると転がり落ちそう(もっとも荷台につける椅子も、車のチャイルドシート型の背中までしっかり固定できるタイプ。安全である)。その点、リヤカーはいい。寝てようが起きていようが、大丈夫。雨よけのビニール天井もついている。荷物も乗せられる。
 ただ、スコーネのような平坦なところはいいが、山坂の多い北の方は、大変だろう。
 知人がスキー場で怪我をしてスノーモービルで、引っ張られた事がある。地面の起伏がそのまま体に伝わって振動となって、すごく恐かったそうだ。
 スウェーデン人の子どもは、小さなうちから、このリヤカーで振動と高速運転に強いように鍛えられている。
 さらに、前につけて、押しながら運転するタイプの自転車もある。荷物を見張りながら運転できるのは、すごくいい。
 小さな子どもの自転車には、車の運転席からでも、視界に入るように、大人の背丈ぐらいの旗を立ててある。これも、安全性を考えた良いアイディアだと思う。

 日本でスウェーデン人を接待した知人が、彼らがお土産に自転車の握りにつける防寒用のカバーを大量に買っていったと話してくれた。たしかに、あれは、スウェーデンにはない。喜ばれるかもしれない。でも、放置する度に、外して、持ち運ばないと、間違いなく3日以内に盗まれるだろう。

2. 自転車のサドルの位置が高い。

 船便で、自分の自転車がくるまで、大家さんのを借りようとして、驚いた。その中で一番小さな自転車さえも、ペダルにようやっと足が届く高さ。
 いえね、そりゃ、わたしの身長に比して座高の占める割合が大きい体型も理由の一つでしょう。でも、同じ足の長さの人が使う自転車でも、地面に足が届かない。
 なぜか。
 日本人は、両足が地面につく高さにサドルを調節しているが、スウェーデン人は、両足がペダルにつく高さにサドルを合わせている。
 そのために、信号待ちの時など、そのままでは、立っていられないので、電柱にしがみついて待っていたり、自転車から降りて待っていたりしなくてはならない。もちろん、自転車を斜めにして、片足だけで立っている人もいる。
 日本人には、不安定で、すごく恐い。
 しかし、日本人の自転車をみると、スウェーデン人は、一様にこう言う。
「そんな足を曲げて自転車をこぐなんて、効率の悪い乗り方をよくするねえ。疲れやすいじゃない」
 
3. 社会が自転車に優しい。

 まず書きたいのは、自転車道路の充実。
 旧市街で、余裕のないところはともかく、ほとんどの道路に自転車専用道路が併設されている。そこには、自転車マークがついているので、スウェーデンの市内を歩く時には、ご注意。だって、歩行者が歩いていると、怒られるのよ。
 郊外に続く道は、幹線道路とは、まったく別の自転車道路がある。車の入れない広さの道で、サイクリングには最適。こっちは、散歩の人も利用できる。
 ルンドから我が家までの20キロも当然この自転車道路がある。これからのシーズン、菜の花畑の真中をサイクリング、気持ち良いぞぉ。
 ただし、冬はつらい…。

 そして、公共の交通機関への自転車持ちこみ可。
 例えばバス、後ろに自転車を引っ掛ける部品がついていて、二台まで乗せてくれる。郊外との連絡バスには、必ずついている。町までバスに乗って、そこから自転車ということができるわけですね。
 ただし、二台までなので、先客がいると、次のバスまで待たなくてはならない。時にこれが、1時間ということもある。
 電車への持ちこみも可。折りたたみ式の自転車じゃなくて、普通の自転車がそのまま、客車に乗る。コペンハーゲンまで線路がつながった今、自転車持参でデンマークに行き、コペンハーゲンをマイ自転車で回れる。
 バス、電車とも持ちこみ料は、大人料金の半額。つまり、子ども料金。切符の自動販売機によっては、人と一緒に自転車の絵が描いてあるものもある。
 ところで、知人がはじめて電車に自転車を持ちこんだ時。
「自転車も乗せたいのですが」と切符売りの窓口で言うと、子ども料金を提示された。
「さすが、自転車の国。自転車と一緒だと、料金が安いんだ」との感想。
 違います!その場合、自転車だけは正当な乗客ですが、あなたは、無賃乗車だったのよ。

4. 自転車泥棒が多い。

 スウェーデンで自転車は決して安くない。日本では、二、三万円で買えそうな自転車も、こっちでは7、8万円する。
 したがって、中古市場が栄える。フリーマーケット、スーパーの掲示板、新聞…いろいろなところで、自転車の「売ります買います」が、行われている。
 路上に転がっている明かに壊れた自転車はゴミとみなして、拾ってもいいのだそうだ。それを集めて、修理して、自転車専門のバザーを開く人がいる。
 そんな時は、早い者勝ち。並べている傍から、品定めをして、よい状態の自転車は飛ぶように売れていく。
 遺失物の自転車も警察から払い下げられて売られている。
 それだけ需要があると盗難も多い。友達が新聞で「売ります」を見て、連絡したところ、同じような自転車が、何台もあった。個人が、そんなに何台も自転車を持っているのが不自然だとは思ったが、安いので、買ったそうだ。
 知人の感想。
「ま、こうやって、買う人がいるから、盗む人の商売が成り立っちゃうのよね」

 さらに、別の知人。比較的新しい自転車が盗まれた。あ、ちなみに鍵なんか、ほとんど何の役にもたたないそうです。
 警察にも報告したが、あまり盗難が多すぎて、まともに探してくれない。あきらめて、中古を買うことにした。
 何軒か自転車屋さんを見て回った時、初めて入る自転車屋の前で、第六感が、ピーンと働いたのだそうだ。そして、隣にいた夫に忠告。
「この店で、わたしの自転車が見つかるような気がする。でも、けっして、店内で怒り出さないでね」
 はたして、中では、彼女の盗まれた自転車が売られていた。当然彼女は証拠をあげて、それが自分の盗まれた自転車である事を主張した。
 すると店主は、
「これは、持ちこまれたものを、買ったのだ。せめて、買った値段だけは払ってほしい」
 店主の態度をみて、盗んだのが本人だと確信した彼女は、断固としてそれを断って、自分の自転車を堂々と持ち去った。
 盗んだのが店主かどうかの事実はわからないけれど、彼女が自分の自転車を取り戻したのは、事実です。

 小さくて盗みやすい子ども用の自転車は、必ず、家の中にしまうぐらいの注意が必要。アパートの下に鍵をかけて置いておいたのに盗まれたと言う話は、枚挙にいとまがない。
 大人用の自転車もアパートで盗まれたという日本人の友達が、スウェーデン人の友達にそれを話したら、彼は一言こう言ったそうだ。
「それでこそ、ルンド」


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