2001/5/11                  73号


喜怒哀楽

ただいまのテーマ

結婚式

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 日本人の友達Hさんがサンボのスウェーデン人男性Pさんと結婚した。

 ふたりは、なんと、スペインで知り合った。その後、日本スウェーデンと別れても、交際を続け、Pさんの情熱で一昨年Hさんをスウェーデンに呼び寄せることに成功した。
 最初は、セルボ(同居していない恋人)、次にサンボ(同居している恋人)。そして、とうとう、結婚(籍を入れている恋人?)。駆け足では、あったけれど、スウェーデンの恋人のすべての形態を通過したわけね。

 幸運にも、Hさんは、優しくかつ勇気ある女性なので、かなり危険な友達である私を結婚式に招待してくれた。

 というわけで、今回は、みなさまに、スウェーデンの結婚について、体験レポートを書けるわけです。

 なにが、すごいって、結婚の前がすごい。
 スウェーデンには伝統的に、結婚前のカップルをからかうしきたりがある。男性の場合SVENSEXA、女性の場合MO:HIPPAと呼ばれる。
 
 スウェーデンの町中で、特にこの時期、変な格好をして歩いている男性や、正気とはおもわれない服装をしている女性をみても、「春だからなあ」などと、納得してはいけない。
 多くの場合、彼らは、彼らの親愛なる悪友達の手で、結婚前の儀式をさせられているのだ。
 超派手な化粧で、超派手な服装をして、繁華街でにんじんを売らされる、なんて、あたり前。

 実は、わたしもそんなしきたりのあることなんか知らなかった。

 それは、いきなりの1本の電話から、始まった。
「HのMO:HIPPAをするから、土曜日に参加してくれない」
初めて話をするHさんとPさんの友達からだ。

 いわく、二人には内緒で、スウェーデン人の友達たちが、「儀式」の準備をしている。土曜日に、ふたりは、マルモに買物に行く予定。その、迎えをPの両親がすることになっているが、彼らのかわりに、そこに行って、彼らを拉致する。
 その後、男女別のグループに分かれて、それぞれの企画にしたがう。
 途中から合流して、夜は、全員でパーティ。全部出なくても、参加できるところだけでいいよ。

 ちょっと午後からは、用事があったのだが、こんな、おもしろそうなこと取材しないわけにはいかない。二つ返事でOKした。
 ところが、何時にどこにいったらいいか、前日だというのに、決まっていないと言う。
 なにしろふたりには、完全に内緒のビックリパーティなので、本人に予定を確認するわけにはいかない。周囲を巻き込んで、情報を収集中なのだ。もちろん、Pさんの両親は、グルだ。
 とりあえず、翌朝8時にまた電話するということになった。

 たまたま、その夜Hさんが、我が家に遊びに来た。友達数人の団欒の中で、
「急に、車を買うことになったのよ」と彼女が言う。
「でね、急に明日、車を取りに行くことになったのよ」
 え〜っ!マルモに買物じゃなかったの!!!さらに
「反対されるからって、Pの両親には、言ってないの?」
 え〜っ!!!明日の計画はどうなるの???
 内心の動揺を隠しながら、「へえ、どこで車を買うの?」
「何時に車やさんは開くの?」「車を引取りには、二人で行くの?」……
 
 探りをいれる。我ながら、「そんなプライベートなことどうでもいいじゃん」と言うような質問で、魂胆、見え見え……。事情を知らない周囲の友達も、「バカに詳しく聞くなあ」と思っただろう。わたしは、探偵にはなれない。
 でも、素直なHさんは、疑いもしなかった。
 
 このハラハラドキドキは、翌日も続く。
初対面のスウェーデン人の友達たちと、ガソリンスタンドで待ち合わせをする。
「まだ、行き先がはっきりしてないから、とりあえず、ここで会おう」
 さらに、グルである弟夫婦や、他の友達と連絡をとりながら、待ち合わせを繰り返し、メンバーを増やして行く。
 主催者のAが、天を仰ぎながら、つぶやいた。
「神様。ありがとうございます。携帯電話というものを、人類にお与えくださって」

「今、Hは、マルモに買いものに行った。Pは、弟の家だ。さあ、行こう」
ようやっと、拉致場所が決まったようだ。

 弟の家に押しかけて、驚くPさんに目隠しをして拉致し、男性達は、どこかへ行ってしまった。車の屋根の上に、古いソファーが縛り付けてあったのが、妙に気になる。

 女性陣は、弟の家で、こっそりかくれて、Hさんが、買物から帰ってくるのを待つ。お迎えは、事情を知っているご両親。
 あとで、Hさんいわく
「どおりで。ばかに、買物を急がせるなあと思ったわ」

 「ただいまぁ」と帰ってきた。あ、しまった!見なれたわたしの車を外に止めてあった。気づかれたかも!!
 「こんにちは」と迎えたが、あの、驚きぶりをみると、やっぱり素直なHさんは、疑わなかったようだ。よかった。

 というわけで、女性陣も無事Hさんを拉致して、出発。

 計画は、すべてスウェーデン人の友達が作っている。主催する側でありながら、わたしにも「ビックリパーティ」であることは、変わりない。どこに行くかわからないまま、車でついていくと、そこは、マルモのサウナ。
 海に突き出た桟橋の先にサウナがある。スウェーデン人は、ここで、体を温めると、そのまま、バルト海に入るのだ。
 スウェーデンの、しかも4月の海…・。拷問でしょう!と思ったら、スウェーデン人は、平気な顔をして入っている。
 今後、スウェーデン人として生活していくHさん。まずは、その洗礼を受けろというわけだ。
 わたしは、見るだけで、リタイアしましたが、さすが、Hさん。肩まで、しっかり海に浸かってました。おみごと!!

 ここまで、すべて、全裸です。(サウナの写真もサイトにアップします。全裸の写真…ただし、さしさわりがあるので、メンバーではない人達です。もちろん…修正入りですが、興味のある方は、覗いてね……なんだか、「スウェーデン報」キャバレーの客引きみたいになってきたぞ)

 で、着衣をするのに、用意されていた、夏至祭の衣装をつけさせられた、Hさん。
スカーフをして、ちょっと、一緒に歩きたくない雰囲気にできあがり。

 そのまま、マルモの中心地に出かけた。
そして、入ったのは、レーザードーム。レーザーガンで、お互いを撃ち合い何人殺して、何回死んだかを競う。特別なベストを着用してレーザーガンを持つと暗闇の部屋の中に入っていく。
 こんな遊び、していいのか!!小学生もいる!!!スウェーデンの意外な一面!!!!

 すっかり驚いているわたし。すでに、主催者から、完全にもてなされる側に回っている。「陰の花嫁」と呼んで!

 この野蛮な遊びも、ちゃんと理由がある。「スウェーデンに来たからにはエルク(大鹿)狩りの練習をしておかなきゃ」というわけだ。

 大鹿狩りで汗を流した後は、市の中心地にある大公園で、ミニュチア夏至祭り。メイストンと呼ばれる中央に建てる柱も作らされて、一般ピープルの好奇と同情の視線の中で、季節はずれの夏至祭。やっぱり、スウェーデン人と結婚するなら、夏至祭でしょう。

 残念ながら、わたしの参加はこの辺りで時間切れ。

 海岸でソファーでくつろぐのが念願だったという夢がかなえられたあと、そのソファーで、こんどは、コーヒー売りをさせられたPさんたちと合流して、宴は夜まで続いたのだった。
 その夜、PさんとHさんは、夕食にお客さんを招待していたので、Hさんは気にしていたのだが、そのお客さんも、もちろん一味だったというおまけつき。

 目隠しされて拉致されていくPさんに
「スウェーデンの伝統なんでしょ」と聞いたら、情けなさそうに
「Tyva:rr(残念ながらね)……」

 スウェーデン人の結婚率が低くて、サンボが多いのは、もしかして、この伝統をおそれているため…・???

 でも、真面目で、シャイなスウェーデン人の別の一面を見て、楽しかったです。

 さて、肝心の式のほうは、後日、小さな村の古い教会で、家族的に行われた。そして、披露宴は、スバーネホルムというスコーネの古城で。

 スウェーデンでは、いかなる場所で結婚式を挙げてもいいのだ。ただし、挙げる地域の教区の牧師さんを頼まなければいけないらしい。
 昨年結婚した別の友達は、故国連総長のハマーショールドさんの別荘地(今は、一般に開放されている)の瞑想の場所(違ったかな?)で、式を挙げた。
 日本の友達に写真を送ったら
「どうして牧場で結婚式をしたの?」

 役所で、簡単に式を挙げる方法もある。

 どの式にもいえるのは、個性的で、出席者と新婚カップルがともに楽しめる温かさがあるということだ。
 プレゼントは、多くの場合、事前に本人から希望を聞いて、欲しいものを用意して、披露宴会場に持っていく。披露宴の後、全員の前でひとつづつ開き、喜びとお礼をつたえるのだ。金額的にも、日本とは比較にならないくらい少ない。参加者も負担にならない。

 今回の式で印象的だったのは、披露宴の翌日、参加者全員で、ハイキングをしたことだ。式場では、よそいきで、しかも、席の近い人としか話せないが、ハイキング中は、普段着で、いろいろな人とより深く知り合える。
 新郎新婦の心遣いが伝わる企画だった。

 披露宴でのわたしの席はひとりだけ日本人グループから離れて(間違いなく、後難をおそれて隔離されたんだと思う)、新郎のお父さんと叔父さんの間だった。
「よその国から、しかも、遠い日本からお嫁さんを貰うのって、どんな気持ち?」と聞くと
「会う前はね、ちょっと、びっくりしたよ。でも、一度会ってからは、こんな素敵な娘が出来て、本当に、うれしく思っているんだ」

 どうぞ、末永く、お幸せに…


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