2001/7/7                  78号


喜怒哀楽

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学校5

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 スウェーデンの学校では、プラオ(Praktisk arbetslivsorgentering)と呼ばれる職業体験が、カリキュラムの中にある。学校によって多少の個性はあるが、おおむね1、2週間、春頃実施するところが多い。

 息子の学校でも8年生(日本の中学二年生)からある。自分の興味のある職場に実際に二週間通うのだ。その間、登校の義務はない。受入先の労働時間に合わせる。

 そのため、この時期、あちこちで小さな店員や従業員をみかける。原則として、相手が受け入れてくれさえすれば、どこに行ってもいいようだ。
 職安や図書館などで体験した人もいる。お酒の出るようなカフェで、みかけたこともある。レストランやカメラやさんで、慣れない手つきで、何度も店の人にレジの打ち方を質問していたりして、はっきり言って労働になっていないことが多い。

 しかし、スウェーデン社会は、この見習い生徒を温かい目で見ている。

 先日は、美容院に行ったら、プラオの女の子が、せっせと髪の毛を掃き集めていた。待っている間にコーヒーを出してくれるのだが、美容師に「ほら、英語でコーヒーはいかがですかって、聞いておいで」とつつかれていた。
 英語を話すのが、照れるのか、何回か傍まで来ては、戻って行って、うしろから店員さんに背中を押されていたのが、妙におかしかった。
 ついに、勇気をだして「コーヒーはいかがですか」
「はい、いただきます」彼女、いそいで、戻る。店員になにか言われてまた来る。
「砂糖は、入りますか」
「いりません」彼女、戻る。また、なにか言われて、また、おずおずと来る。
「えっと、ミルクは入りますか」
こんな感じである。わたしは、強暴なライオンか??そんなに、恐がらなくても…。

 プロの劇団で、裏方を体験する子もいれば、親のレストランで皿洗い体験する子もいる。もちろんアルバイトではないので、無給である。受け入れる方も、さぞかし手がかかって大変だろう。しかし、子供たちにとっては、社会に生で接することができるたいへん良い試みだと思う。

 この職業体験は、義務教育の上級生になると毎年実施される。さらに、高校になっても、カリキュラムに組まれている。例えば音楽学校の生徒だと、楽器店などで、働いたりしている。
 スウェーデンの高校では、こうした実社会体験や、ボランティア活動が必修になっているところが多い。なんらかの形で、実社会に接する機会を若いうちから持たされるのは、自分の将来を考える上で、大きな力になる。

 ところで、我が家の息子もプラオの季節がやってきた。スウェーデン語はぜんぜんだめ。英語もたどたどしい。というわけで、受入先は、ひとつしかないでしょう。夫の勤務先に頼み込んでもらった。もちろん夫は、「おれの評判が下がるから、絶対にいやだ」と反対したのだが、ほかに方法がない。最後は、泣く泣く受け入れていた。
「あいさつは、ちゃんと」とか
「余計なものに触ってはいけない」とか、
事細かな注意をガラにもなくしていた。

「あいつが手伝って、不良品をだしてクレームが来たら、俺が責任取るのかなあ」
「高い機械をこわしたりしないだろうか」
 親としての彼の心配はわかる。なにしろ、自慢じゃないがわが息子、無意識にホットプレートのコードを冷蔵庫にしまうような、宇宙人。
ああ、わたしが、働いてなくてよかったあ…と、しみじみ、無職を感謝したわ。

 行った先は、夫と同じ部署ではなく、工場。さらに、毎日、部署と世話役が変わったので、長期の工場見学のようなものだった。受け入れ側も英語を話すのが面倒だったらしく、終始、スウェーデン語。というわけで、なにも覚えてこなかった。
 しかし、巨大な工場や働くロボットなどを目の当たりにして、感動していた。職場のおじちゃん、おばちゃんには、訳も無く親切にされ、毎日、物を貰って帰ってきたので、本人はすごく楽しそうだった。これで、きっと、また、社会を甘く見ちゃうんだろうなあ。

 抵抗していた夫も、毎朝、息子と一緒に出勤して、一緒に帰宅すると言う生活が、まんざら嫌でもなかったらしい。
 
 ところで、夏休みのこの時期、職場で、小さな子供をたくさん見かける。電車で切符を検札している少年、薬局の窓口で袋に入れている少女、看護婦さんについて歩いているこども…。
 彼らは、プラオでは、ありません。夏休みなので、親が職場に連れてきているのだ。スウェーデンの公私の区別って???
 スウェーデンでは、「アグネスの子連れ出勤論争」は、絶対に起こらない。


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