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1999/10/22                   8号


喜怒哀楽

ただいまのテーマ

家具のIKEA

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 「スウェーデンで一番読まれている本は?」という質問の答えは、
「IKEAのカタログ」です。
 日本でもIKEAの店舗ができているそうで、知っている人には、ああ、あれね。ともうお分かりでしょうが、スウェーデンで一番大きな家具販売会社の名前です。もしかすると、世界で一番大きな家具販売会社かもしれません。
 前回予告で「家具メーカーIKEA」と書きましたが、正確には、メーカーではありません。今日は、そのあたりを少し。

 IKEAとう発音がイケヤに聞こえるので、日本人の耳にはなじみやすいのですが、れっきとしたスウェーデン人の創立した会社です。
 創立者は、イングバール・カンプラート。1926年生まれですから、今、70歳を越えていますが、健在のようです。彼、一代で世界29カ国にチェーン店を持ち、14000万人の客を集めるようになりました。
 第一号店を出したのが、1958年だそうですから、たかだか、40年のことです。

 その成功の秘訣は、創立者の着眼のよさにあると言っても過言ではないでしょう。なにしろ、この人は中学の時に、通信販売という方法に目をつけて、自分でそれをやっていたというから、すごいではないですか。
 今もそうですが、スウェーデンは国土が大きいので、街に出て買い物をするというのは、かなり一苦労なのです。私の住んでいる町も、今月初めて、本屋ができました。フロッピーディスクを買いに車で20分走って隣街にいかなくてはなりません。
 イングバール・カンプラートは、その流通に目をつけたのです。そして、簡単なカタログを送って、マッチなど日用品を扱う通信販売をはじめました。これだと資金力がなくてもできるからでもあります。
 その時に、思いのほか家具の需要が高いことに気がつきました。というのは、それまで、家具と言うのは、高級家具か、とてもシンプルな安い家具か、自分で日曜大工で作る家具しかなかったのです。
 また、家具を買おうと思うと、ひとつの店舗では、展示されている数が限られているため、気に入ったものを探して、何軒も店をまわらなくてはいけないという状況もカタログ販売には有利でした。

 そこで、イングバール・カンプラートは、商品を家具に絞って扱うようになりました。しかも、いろいろな客のニーズに合うように種類も値段の幅もとりそろえて、それまで、安い家具といえば、選ぶ余地がなかった現状を打破しました。
 さらに、客のニーズにあった家具をデザイン、開発もしました。ここで、イングバール・カンプラートのすごいところは、制作はしなかったことなのです。
自分でいろいろなことを抱えるとリスクも大きくなる。と考えた彼は、デザインの特許はとるのですが、制作は外注。そのために、IKEAの家具は、Made in KoreaとかMade in Portugalとか、それぞれの家具の種類に応じて、一番安く良いものができるところで制作されています。
 そして、販売は、一手に自社のチェーン店で行います。IKEAで家具を買ったことがある方ならご存知のように、IKEAは、組み立てすらやりません。組み立ては、誰がやるかって?消費者です。
 我が家もメインベッドをIKEAで買ったら、10ぐらいに梱包が分れた荷物が、どさっときて、カラーボックスさえまともに組み立てられない夫とスウェーデン語のマニュアルと格闘しながら汗だくになって、作り上げました。作り上げるまで、最低二回は離婚の危機がありました。

 でも、そうしたスリムな方針のおかげで、消費者は、2〜3割は安く家具を手に入れることができます。また、IKEAは、若手の有能なデザイナーをたくさん抱えて、よりよい製品アイディアに資金を惜しみません。
 さらに、初めから消費者が、持って帰って組み立てることを念頭にデザインしていますから、梱包に一番適した設計をしています。でこぼこの無いような運び安いパッケージにしておけば、倉庫や配送のコストも押さえられるというわけです。

 スウェーデンに来たばかりの頃、雨の土曜日にIKEAに行くと、娘のクラスメ―トや隣のクラスの先生たちにたくさん会いました。翌日、担任にその話しをすると、
「天気の悪い週末は、行く所がないから、みんなIKEAにでかけるのよ」
確かに何も買うものがなくても、見ているだけで楽しい商品がたくさんあります。

 IKEAの社員は幹部でも出張にエコノミークラスの飛行機しか使わず、ホテルもその地域で一番安いところを選ぶのだそうです。その理由は、経営者がけちなのではなく「消費者に対していかに安くていいものを供給するか」を使命と考えているからなのだとか。
 確かに、IKEAの店舗にもその企業姿勢がうかがわれるものがたくさんあります。まず、入り口の側に、小さな保育園ぐらいのスペースを確保して、託児してくれます。親は、ちょろちょろ動き回る子供を気にしながら買い物をしなくてもいいのです。
 また、IKEAのレストランは、安くおいしいと評判です。我が家では、IKEAに行く日は、そこでランチを食べると決めています。本業は家具を売るのだからレストランは客の便宜をはかるサービスと考えているのでしょう。さらに、そのレストランの一角にも、ちいさなプレイエリアが作ってあります。食事に飽きた子供たちがしばし遊んでいられるようにです。
 さらに、さらに、最近では、その子供エリアの片隅にアイスクリームの箱が置かれ、子供たちは、自由にアイスクリームをもらって食べてもいいのです。係りの人が見ているわけではないので、もし、あなたが、自分も子供だと思っているなら、一本どうぞ。誰も、とがめません。

 さて、先日買ってきた本だなの部品が足りなくなっていました。確認しないで買ってきた私も馬鹿だったなあと思いながら、サービスコーナーに行くと、なんの追求も無く、すぐに部品をだしてくれました。
 よく考えてみると、不良品をださないように、人件費をかけてチェックを厳重にするよりも、不良品はあるものだと考えて、交換を容易にするほうが、コストがかからないのかもしれません。
 イングバール・カンプラートの語録にこんな言葉があります。
「寝ている人は決して間違いをしない。何か間違いをするということは行動力のある人の特権であり、間違いは後で、修正し、改善できるものだ」
 励まされません?

 なんと、ソ連でも、来年、IKEAがオープンすることになりました。そして、開店の12ヶ月も前から、IKEAの前には長蛇の列ができているそうです。
良い家具に飢えているのかなと思ったら、  職をもとめて…なのだそうです。


関連画像はここ




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